クイズで紐解く電気工事法

問題(本文)編 第3回





 前回(第2回)に続いて、電気工事業者になるために必要な手続に関する次の文章を読んで、その内容と一致するものを、

 問題(選択肢)編 の中からすべて選びましょう。

※文章中(  )内の表示は、電気工事業法の条数をアラビア数字、項数を丸付アラビア数字、号数をローマ数字で示すものです。

 また、電気工事業法以外の法令、規則等については、その名称を頭に表示してあります。

 例:(4①Ⅱ)は「電気工事業法第4条第1項第2号」、(17の2①)は「電気工事業法第17条の2 第1項」の意。

   「電気工事士法第3条第2項」は(電気工事士法3②)、「電気工事業法施行規則第11条」は(電気工事業法施行規則11)

    と表示。



 前回(第2回)は、「一般用電気工事を行う事業」を営もうとする者が「登録電気工事業者」になるためにする登録申請手続

のあらまし(「登録電気工事業者登録申請書」の記入要領等)を眺めながら、「偽りのない事実を申請書に記入して提出すれば、

ほぼ間違いなく登録を受けることができる」旨を強調しました。「『ほぼ』間違いなく」とはどういう意味でしょうか。

また、そこから『ほぼ』を除いて「間違いなく」にするにはどうすればよいのでしょうか。

 「許可」「免許」「認可」「登録」等々、様々な名称の処分がありますが、名称にかかわらず、処分を受けるためには申請者

が満たさなければならない一定の要件があり、個々の法律がそれを定めています。細かく見ると、その要件には消極的なものと

積極的なものの二種類があることに気がつきます。以下、消極的な要件を「拒否事由(欠格事由)」、積極的な要件を「処分の

基準」と呼んで、それぞれ内容を見ていきます。[呼称自体は、必ずしも個々の法律の法文上のそれと一致しません。]

 「拒否事由(欠格事由)」とは、申請者がそれに該当すると申請が拒否されて処分を受けることができない事由のことです。

宅建業法が定める「成年被後見人」(宅建業法5①Ⅰ)がその例で、「成年被後見人」に該当する申請者は申請を拒否されて宅

建業の免許を受けることができません。それを受けるためには「成年被後見人」に該当「しない」ことが求められるので「消極

的要件」と呼ばれます。この要件に該当するかしないかの判断は、客観的に明らかな事実に基づく単純なものなので手間を要し

ません。

 「処分の基準」とは、処分を求める申請者の側から行政庁側に対して、自分がそれに適合していることをアピールしなければ

ならない基準のことです。所定の基準に適合「する」ことが求められるので「積極的要件」と呼ばれます。しかし、どれだけア

ピールしても、その申請者が「基準に適合していると」行政庁が「認めるときでなければ」処分「をしてはならない」(建設業

法7①柱書等)と法律が定めているため、行政庁の基準適否認定の審査は慎重なものとならざるを得ません。基準に適合してい

ると認めるかどうかの判断は、「客観的に明らかな事実に基づく単純なもの」と異なり、微妙な場合が少なくないからです。他

の処分と異なり、建設業法が定める「建設業の許可」の場合にその申請のハードルが高いのは、「拒否事由(欠格事由)」に加

えて「許可の基準」が設けられているからに他なりません。(ちなみに、この「建設業の許可」という処分は、電気工事業者に

とっても決して無関係な処分ではありませんが、その申請をする場合には相応の準備と覚悟をもってする必要があります。)

 これに対して「登録の基準」が設けられていない電気工事業者の登録申請の場合は、拒否事由(欠格事由)に該当するかどう

かだけが結果を左右するカギになると考えることができます。前回強調した「『ほぼ』間違いなく」というのは「『拒否事由に

該当しさえしなければ』間違いなく」という意味なのです。したがって、申請者にとって最も重要なことは、登録の申請をする

時点で、自分がはたして拒否事由に該当しているかどうかを正確に判断することだと言えるでしょう。その判断の精度が高けれ

ば高いほど結果(登録を受けられるかどうか)の見極めがつくことになるからです。

 そこで今回(第3回)は、その「登録拒否事由(欠格事由)」の中で、特に、初めて登録を受けようとする申請者にとって直接

かかわりのある「特定営業所への主任電気工事士設置義務違反」(6①Ⅵ)について見ていきます。一般用電気工事の業務を行う

登録電気工事業者(申請者を含む)が、その作業の管理を行う特定営業所に、主任電気工事士を設置する義務を負う、という話は

既に前回紹介しましたが、この義務に違反する申請者は、真正面から登録拒否事由に該当するため、登録を受けることができませ

ん。そうならないためには、 ①「(特定)営業所」がどのような場所でなければならないか ②主任電気工事士にはどのような

者を選ぶ必要があるのか、をよく理解して、登録拒否事由に該当しないように申請の準備を進めることが不可欠です。



①「(特定)営業所」はどのような場所でなければならないか

 営業所は、実体のない架空のものでは困ります。また、実在するにしても、パソコンの中にだけ存在するというのも認められ

ません。実際に電気工事の作業管理を行うことができる特定の場所に営業所を設置しなければなりません(3①)。営業所を表

示する申請書上の記載がその「所在の場所」(所番地)によるのはそのためです(4①Ⅱ)。

 もっとも、申請者が会社等法人である場合、その住所として申請書に記入した本店の所在の場所に営業所を設置することには

何の問題もありません。申請者が個人事業主である場合も、申請書に記入した本人の住所をそのまま営業所と定めることができ

ます。営業所は実在するどこか特定の場所にこれを設置しなければならないが、それは会社の本店の所在場所や個人事業主の住

所と同じであってもよい、ということです。その場合は、申請書の営業所の所在場所記入欄に「同上」と記入しておきます。

 営業所は、単にそこで電気工事の作業管理を行うことができればそれでよいという場所ではなく、電気工事業者が事業者とし

て果たさなければならない様々な営業上の義務を履行できる場所であることが必要です。例えば、電気工事業者はその「営業所

ごとに、絶縁抵抗計その他の器具を備えなければならない」(24①、電気工事業法施行規則11※1)ため、それらを適切に

保管できる収納スペースがないと困ります。また、「営業所ごとに、その見やすい場所に・・・標識を掲げなければならない」

(25①、電気工事業法施行規則12※2)ことや「帳簿を備え、・・・保存しなければならない」(26①、電気工事業法施

行規則13※3)こと等があります。これらの義務に違反した場合には、刑事罰や秩序罰を定めた罰則規定が用意されています

ので(39①Ⅱ、42①ⅣⅤ)、その一つ一つをきちんと履行することのできる場所を営業所として定めなければなりません。



※1 一般用電気工事の業務を行う営業所に備えなければならない器具
  絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計(抵抗及び交流電圧を測定できるもの)
※1 自家用電気工事の業務を行う営業所に備えなければならない器具
  絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計(抵抗及び交流電圧を測定できるもの)
  低圧検電器、高圧検電器、[継電器試験装置、絶縁耐力試験装置]
  ただし、[  ]内の装置は、必要なときに使える態勢が整っていればよい


※2 登録電気工事業者が掲げなければならない標識の記載事項
   イ 個人事業主の場合は本人の氏名、会社等法人の場合は会社等の名称と代表者の氏名
   ロ 営業所の名称 及び その営業所の業務に係る電気工事の種類
    (電気工事の種類とは、一般用電気工事、自家用電気工事 の どちらか一方 又は 両方)
   ハ 登録年月日 及び 登録番号
   ニ 主任電気工事士の氏名


※3 営業所ごとに備える帳簿の記載事項と保存の期間
 一 注文者の氏名又は名称及び住所
 二 電気工事の種類及び施工場所
 三 施工年月日
 四 主任電気工事士及び作業者の氏名
 五 配線図
 六 検査結果
   帳簿の保存期間は記載日から5年間




②主任電気工事士にはどのような者を選ぶ必要があるのか

 (主任電気工事士に選任されるための資格要件とその職務の内容)

 事業者が、主任電気工事士に選任して特定営業所に設置することができるのは、「第一種電気工事士又は・・・免状の交付を

受けた後電気工事に関し3年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士」(19①)だけです。これ以外の者( 例えば、そも

そも電気工事士でない者や実務経験年数が不足している第二種電気工事士等)を主任電気工事士に選んで特定営業所に配属して

も、登録電気工事業者(申請者を含む)としての義務を果たしたことになりません。「主任電気工事士に選任されるための資格

要件を満たしていない者」を選んでも、「主任電気工事士」を選任したことにならないからです。この「選任されるための資格

要件」を巡って、第一種電気工事士と第二種電気工事士の扱いに差があることに注意する必要があります。第一種電気工事士は

その免状の交付を受けるに当たり、試験の合格の他に所定の実務経験を求められます(電気工事士法3①、4③Ⅰ、電気工事士

法施行規則2の4①②)。これに対して第二種電気工事士は、何ら実務経験を有することなく試験の合格だけで免状の交付を受

けることができます(電気工事士法3②、4④Ⅰ)。そのような両者を同一に扱うことはできません。そこで、第二種電気工事

士を主任電気工事士に選任する場合には、その者が「免状の交付を受けた後・・・3年以上の実務の経験を有する」者であるこ

とを追加的に要求して(19①)、さらにその実務経験を「主任電気工事士等実務経験証明書」(申請書とともに提出する添付

書類の一つ)によって証明しなければならない取扱いにしているのです。この取扱いから、「第一種電気工事士を主任電気工事

士に選任するのが本来の姿である」とする電気工事業法の趣旨(法意)を忖度する必要があります。「どうしても第一種電気工

事士の中に適当な候補者がいない場合に限り、免状取得後3年以上の実務経験を有する第二種電気工事士を(言わば例外的に)

選任してよい」とするのが電気工事業法の本音なのです。したがって、登録申請者としては、可能な限り、第一種電気工事士の

中から主任電気工事士を選任して営業所に設置するように努めるべきでしょう。

 なお、特定営業所「ごとに」設置される主任電気工事士は、その営業所の「専任」でなければならず、一人の主任電気工事士

が同時に複数の営業所の任務を掛け持つ「兼任」ないし「兼務」は認められません(19①)。(申請書には個々の営業所ごと

にその営業所の主任電気工事士の氏名を記入する欄が設けられています。)また、事業者が外部の者に主任電気工事士を任せる

ことも認められません。主任電気工事士はその事業者と雇用関係にある従業員でなければならないのが原則です(電気工事業法

施行規則2②Ⅲ ※4)。例外として認められるのは、事業者が会社等法人の場合の役員(取締役等)と個人事業主の場合の本

人です(19②)。例えば、自ら第一種電気工事士であるA氏が、会社を設立してその営業所の主任電気工事士になることは全

く問題ありません。A氏が個人事業主である場合も同様です。会社の社長(役員たる取締役)や個人事業主本人が営業所の主任

電気工事士を兼ねることには何の問題もないので、先ほどの「兼任」「兼務」の禁止と区別する必要があります。

 特定営業所に設置された「主任電気工事士は、一般用電気工事による危険及び障害が発生しないように・・・作業の管理の職

務を誠実に行わなければなら」ず(20①)、他方「一般用電気工事の作業に従事する者は、・・・その・・・指示に従わなけ

ればならない」とされています(20②)。その結果、「電気工事の欠陥による災害の発生の防止」が図られ(電気工事士法1

①)、「もって一般用電気工作物・・・の保安の確保に資すること」になる(1①)という寸法なのです。



※4 登録申請書と同時に提出する添付書類の一つに「主任電気工事士が登録申請者の従業員であることを証する書面」(「雇

用証明書」)があります。

















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